拳とパンチ
January 18, 2012 by Vladimir Vasiliev
「拳とパンチ」
by ヴラディミア・ヴァシリエフ
数年前、私がモスクワにミカエル・リャブコの元を訪れた際、彼は壁に対してゆっくりと行うプッシュアップを披露してくれた。私はいまだによく覚えている。彼の隣に立っていた私は、それがどのようなものであったかはっきりと覚えている。部屋を覆い尽くすほどの巨大な獣のように感じられ、壁は彼の拳のもとできしみ、耳鳴りのような音を立てていたのだ。
システマのプッシュアップは、単なる肩や胸のエクササイズではない。戦いとストライクの準備として、全てを含むメソッドである。それをミカエルがやる際は、拳が接している表面を繊細に感じ取り、そしてただ身体を上下に動かすだけでなく、全身を支えられるよう、うまく体重を使っていた。押して離れる力は、スムーズに強く、そしてしっかりと彼の腕を通って足へと伝わり、上へともどって来た。
拳でのプッシュアップは、とても良いパンチの練習となる。正しく行えば、私たちは体内に緊張を作ることなく、ストライクする方法を学ばせてくれる。必要最低限だけの筋肉を使う、身体をリラックスさせたまま、必要なだけの筋肉を使うプッシュアップを学ぶと - ストライクの時も同様のことが出来るようになる - つまり、パンチを放ちながらも身体にテンションが無いままにすることが出来る。筋肉の緊張をコントロールすることは、私達に力と精度を与え、距離を正しく把握させる。あえて届かさせる必要が無くなり、パンチは短かく、強く、正確になる。テンションの無いパンチは、無理や疲れによる副作用がないため、トレーニングや戦いの後のリカバリーに掛かる時間が最小限となるのだ。
何年も前、システマを経験する以前に私は空手を学んでいたのだが、明らかな弱点に気付いた。ちょうど打撃を行った時に、その状態のまま身体が固定され、硬直した体勢のまま緊張し、身動きが取れなくなってしまうのだ。これは実戦においてしばしば、脆い体勢となってしまうことを知った。ちょうどその瞬間に打撃を打たれたら、その人はいとも簡単に負傷してしまうだろう。緊張した身体には敏感さと敏捷さが無いために、素早くスムーズに反応し、避けたり、反撃したりすることができないのだ。
どのようにプッシュアップを練習するべきかは、次のとおりだ。
・拳の上に身体を乗せ、プッシュアップの姿勢をとる。
・拳の表面を、出来るだけ無理なく多く床に触れるようにする。
・動作範囲の全体に渡って、開始時と同じ拳の場所で床を感じながら、プッシュアップを行なう。
・その間、身体に起こるテンションを探す。床に対しての敏感さが拳の表面から失われたら - テンションが現れたという事がわかる。その場合、プッシュアップを続け、ブリージングと動きでリラックスするようにする。
・必要と感じるだけ繰り返す。
また、ミカエルはこのようなプッシュアップによって緊張をコントロールすることは、健康にとてつもない恩恵があると説明していた。過度の負荷を頭に向かわせてしまうことなく、全身に均等に分散させるのだ。私達は、ストライクの際、過度の負荷が頭に伝わってしまうことがどれだけ危険かを知っている。このことをプッシュアップを行う際にマスターすれば、パンチを打つ際にもこの負荷もコントロールできるのである。
システマにおいて、優れた戦士は健康と真の技術の両方を持っていると言われる。パンチを打つことと受けることには非常に多くの興味深い事柄がある。私はこれらのトピックと素晴らしい詳細を2月に行われる「STRIKES Seminar」や、8月の「SYSTEMA AT FULL RANGE Camp」でお伝えできればと思う。
2012年1月11日配信のニュースレターより
以下は本編と直接関係ないですが、ミカエルによるストライクの指導の映像。
by ヴラディミア・ヴァシリエフ
数年前、私がモスクワにミカエル・リャブコの元を訪れた際、彼は壁に対してゆっくりと行うプッシュアップを披露してくれた。私はいまだによく覚えている。彼の隣に立っていた私は、それがどのようなものであったかはっきりと覚えている。部屋を覆い尽くすほどの巨大な獣のように感じられ、壁は彼の拳のもとできしみ、耳鳴りのような音を立てていたのだ。
システマのプッシュアップは、単なる肩や胸のエクササイズではない。戦いとストライクの準備として、全てを含むメソッドである。それをミカエルがやる際は、拳が接している表面を繊細に感じ取り、そしてただ身体を上下に動かすだけでなく、全身を支えられるよう、うまく体重を使っていた。押して離れる力は、スムーズに強く、そしてしっかりと彼の腕を通って足へと伝わり、上へともどって来た。
拳でのプッシュアップは、とても良いパンチの練習となる。正しく行えば、私たちは体内に緊張を作ることなく、ストライクする方法を学ばせてくれる。必要最低限だけの筋肉を使う、身体をリラックスさせたまま、必要なだけの筋肉を使うプッシュアップを学ぶと - ストライクの時も同様のことが出来るようになる - つまり、パンチを放ちながらも身体にテンションが無いままにすることが出来る。筋肉の緊張をコントロールすることは、私達に力と精度を与え、距離を正しく把握させる。あえて届かさせる必要が無くなり、パンチは短かく、強く、正確になる。テンションの無いパンチは、無理や疲れによる副作用がないため、トレーニングや戦いの後のリカバリーに掛かる時間が最小限となるのだ。
何年も前、システマを経験する以前に私は空手を学んでいたのだが、明らかな弱点に気付いた。ちょうど打撃を行った時に、その状態のまま身体が固定され、硬直した体勢のまま緊張し、身動きが取れなくなってしまうのだ。これは実戦においてしばしば、脆い体勢となってしまうことを知った。ちょうどその瞬間に打撃を打たれたら、その人はいとも簡単に負傷してしまうだろう。緊張した身体には敏感さと敏捷さが無いために、素早くスムーズに反応し、避けたり、反撃したりすることができないのだ。
どのようにプッシュアップを練習するべきかは、次のとおりだ。
・拳の上に身体を乗せ、プッシュアップの姿勢をとる。
・拳の表面を、出来るだけ無理なく多く床に触れるようにする。
・動作範囲の全体に渡って、開始時と同じ拳の場所で床を感じながら、プッシュアップを行なう。
・その間、身体に起こるテンションを探す。床に対しての敏感さが拳の表面から失われたら - テンションが現れたという事がわかる。その場合、プッシュアップを続け、ブリージングと動きでリラックスするようにする。
・必要と感じるだけ繰り返す。
また、ミカエルはこのようなプッシュアップによって緊張をコントロールすることは、健康にとてつもない恩恵があると説明していた。過度の負荷を頭に向かわせてしまうことなく、全身に均等に分散させるのだ。私達は、ストライクの際、過度の負荷が頭に伝わってしまうことがどれだけ危険かを知っている。このことをプッシュアップを行う際にマスターすれば、パンチを打つ際にもこの負荷もコントロールできるのである。
システマにおいて、優れた戦士は健康と真の技術の両方を持っていると言われる。パンチを打つことと受けることには非常に多くの興味深い事柄がある。私はこれらのトピックと素晴らしい詳細を2月に行われる「STRIKES Seminar」や、8月の「SYSTEMA AT FULL RANGE Camp」でお伝えできればと思う。
2012年1月11日配信のニュースレターより
以下は本編と直接関係ないですが、ミカエルによるストライクの指導の映像。