システマをどのように教えるか Part1 byヴラディミア・ヴァシリエフ

March 16, 2010 by Vladimir Vasiliev  
これまでここではバックナンバーを掲載してきましたが、今回はヴラディミアによる最新のトレーニングTipsです。トレーニングを指導する立場の人にはもちろん、「どのようにシステマを学ぶのか」ということも教えてくれる、たいへん示唆に富んだ内容となってます。

ふだん、あまりマスターに会えない人は、迷ったらまずマスターの言葉に戻る、というのが大切だなあ、なんて訳しながら思いました。

ではどうぞ。

「システマをどのように教えるか」…Part1 ヴラディミア・ヴァシリエフに聞く  2010年2月16日 ニュースレターに掲載

Q:システマが急速な勢いで広まっています。多くの人々がシステマの練習を楽しみ、熱心にシェアしています。あなたが何らかのガイドラインや方向性を示せば、公式インストラクターとしてシステマを教えている人や、友達、同僚、家族などに個人的にシステマの練習をシェアしている人々の大きな助けとなるでしょう。

A : 私もそう思います。十分、議論するべきトピックです。システマの発展にともなって私たちの理解はさらに深まり、議論やトレーニングもより面白いものとなるのです。私が皆さんに何かを提示あるいは説明をするとしたら、まず私は「私たちは“自分たちが何をしているかを知らねばなりません(know what we are doing)”」とお伝えします。私たちは他者に与えるもの全てに責任を持つのです。

「1.危害を加えない」というのは、私たちにとって土台となるルールです。自分たちが何を教えているのかを理解し、それがどのような形であっても人を身体的、心理的にダメージを与えないことを保証しなくてはなりません。とても簡単なことですが、システマでは破壊するものはすべて間違いで、強化し、育て上げるものはすべて正しいのです。例えば“正しい呼吸”とともにエクササイズをすれば、私たちの心臓や循環系、神経系が充実することで精神も満たされ、穏やかで優れたものとなります。またどんなスポーツであろうとブレス・ワークをせずにトレーニングをおこなえば、緊張して疲れてしまって肉体的な健康のあらゆるパラメーターにダメージを与えたり、破壊してしまったりするでしょう。心理面においても不安定でもろく、弱くなってしまいます。

システマのトレーニングや戦いにおける、“真っすぐで自然な姿勢、スムーズで連続した動きそして正しい心の状態”についても同じです。これらの大きな原則はお互いに影響を及ぼしあっているのです。システマは決して機械的なものではなく、生きていることに気をつけてください。ですからテクニックを分類したり、覚えたりすることはできません。学びのプロセスは技術的なものではなく、直感的で動的なものなのです。

Q:良いクラスを行なうために、なにか良い例を挙げてもらえますか?

A:まずインストラクターは、参加者がやってきた時に、彼らのコンディションを把握しなくてはいけません。運動中には心泊数や血圧、体温が上昇します。もしかしたら前の夜に寝不足だったり、遅くまで飲んでいたりして疲れている人がいるかも知れません。そんな彼らに厳しいトレーニングをさせたら、ムダに緊張させたり、故障の原因になったりしてしまいかねません。理想的な心泊数は1分あたりに60回です。その心拍数を維持し、なおかつエクササイズを行なうごとに毎回、確実に心泊数を毎分60回のペースに戻すことができれば、疲労の始まりをかなり遅らせることができるでしょう。

パラメーターを上げたときは必ず元の正常な状態に戻さなければなりません。もちろん、あらゆるパラメーターをコントロールする鍵は、“正しいブリージング”です。ブリージングと動きはお互いにしっかりと手に手を取り合っていなくてはならないものです。ご存知の通り、血圧は身体の左右や上下など、あらゆる箇所でつねに同じなわけではありません。ブリージングは左右や身体の末端に至るまで、血圧を均一にしてくれるのです。

もしトレーニングが正しく行われていなければ、それを見分ける事ができます。参加者達の感情がどこか乱れているのです。もしクラスのあとに戦いの準備ができたように感じたならば、トレーニングとブレス・ワークが適切に行なわれなかった、ということです。

ブレス・ワークととともに行なうスロー・エクササイズは、腱によく働きかけ、強く弾力に富んだ身体を作り上げます。それらによって乳酸も除去されます。繊維組織にもまた独自のやり方で働きかけ、私たちに耐久力と爆発的なポテンシャルを与えてくれます。加えてストレスも無いので、神経系がより強くバランスのとれた状態になります。ブレス・ワークは起きたストレスをすぐに取り除いてくれるのです。

もう一度、言いましょう。私たちは、自分たちが何をしているのか、そこに含まれている意味も全て理解するべきです。私のクラスには、他の格闘技やスポーツで怪我をした人達も多くやって来ます。彼らは戦いや事故ではなく、単なるジムでの練習で自らを傷つけているのです。そしてあまりにも多くの人々に、精神的な緊張が見受けられます。それらは戦いによってではなく、トレーニングでの練習も含めて、ただの日常生活によるストレスから生まれているのです。これは自分たちが“何を”行なっているか、なぜ行なっているのかに注意し、分析しようとしないためです。

私たちは夏に行なわれる「Summit of Masters 」にて、このことについて詳しく扱うつもりです。まずはどうか、自分が何をしているか、ということについて、もっと注意深く、賢明になって下さい。もしあなたが指導を受けている立場であれば、先生をよく見てみましょう。多くの場合、彼らは生徒達を上回っているわけではありません。ただ同じくらい緊張して、効率の悪い動きをしているものです。そんな時、彼らは何を生徒に伝えることが出来るのでしょうか?

Q:自分の先生に明らかな問題があるのを見つけたとき、生徒に何が出来るのでしょう?

A:私たちは特定の人になるためにトレーニングをしているのではなく、システマを学びに来ているのであると自覚するべきです。完ぺきな人はいませんし、みな自立しているべきです。また“自分を理解する”ことで知られるシステマはとても奥深く豊かで幅広く、自分自身に働きかけることで、いつでも学ぶ機会を得ることができるのです。トレーニング仲間は必要です。先生や教材も良いですが、結局のところは自分自身にかかっています。一緒にトレーニングする仲間やDVDの観賞は、突き詰めれば自分自身を理解するための手段でもあるのです。自らの真剣な練習によって得た知恵こそが、決して奪われることのない真実であり、恩恵なのです。

Q:ヴラディミア。あなたは以前、「教える人が結果を早く得ようとして急ぐことがしばしばあるが、ストライクやウォーキングのような基本的なことにおいては間違ったアプローチである」と言っていました。それらとその他の一般的な間違いについて教えていただけますか?

次のニュースレターに続く…

「システマをどのように教えるか」…Part2 ヴラディミア・ヴァシリエフに聞く  2010年2月23日 ニュースレターに掲載

Q:ヴラディミア。あなたは以前、教える人が結果を早く得ようと急ぐことがしばしばあるが、ストライクやウォーキングのような基本的なことにおいては間違ったアプローチである、と言っていました。それらとその他の一般的な間違いについて教えていただけますか?

A:トレーニングにおいて私たちはまず基礎を築き上げ、そこに何を含めていくかを考えなければなりません。普通の歩行に関しても、とても多くの人が、その経験にも関わらず、ただ歩くこともできません。9割もの人が後ろ向きに歩くことができないように見受けられて、私は心を痛めてしまいます。

緊張は足と背中のあらゆる関節に負荷を与えますので、動きながら戦うことがとても不利になります。退く動きはストライクやナイフによる攻撃を受けたり、群衆の中で動いたりする時、その他の多くのシチュエーションで不可欠なものです。前進と後退の両方に注意をはらってください。様々な歩き方と、異なるブレス・ワークのパターンを組み合わせるのです。「Summit of Masters」では、いくつかの理想的なブレス・ウォークの練習法を扱います。

もう一つの一般的なミステイクは、ストライクの練習をしている時に起こります。多くのインストラクターはストライクの当てる練習について長い時間を費やして話しますが、ストライクを受ける練習についてはおろそかにしてしまうのです。まるで自分たちは決して打たれないかのように。実際の戦いにおいて一発も殴られないことなど、ほとんどあり得ません。また、自分のトレーニングパートナーがパンチの受け方を学んでいないならば、どうやってパンチの打ち方を練習すれば良いのでしょう? ストライクの受け方は最初に学ばねばなりません。そして徐々に衝撃を大きくして行くやり方へとステップアップして行くのです。それはまた、パートナーの中や特に自分自分の中にある緊張を見抜く技術に関わるのです。

結果を焦るために起こるもう一つのポイントとして、気をつけていただきたいのは、トレーニングの目標はたくさんの素早く変わった動きの修得ではなく、自分自身のいらだちや恐怖、怒り、そして自己憐憫のコントロールを学ぶのです。

Q:トレーニングにおける感情的な側面について、お話しいただけますか?

A:概して感情は緊張を生むことでパワーを奪い、知覚を歪めることで私たちが状況をありのまま見きわめられないようにしてしまいます。

もし誰かに褒められて誇らしさを感じたり、批判されて憤りを感じたりした時には、自分たちの気分を観察しなくてはいけません。それらは私たちがいかに弱く、簡単に操られてしまうかを教えてくれているのです。弱さを見つけることは悪いことではありません。そうすることで、それらを取り込むことができるからです。

システマの美点は、こういった望ましくない感情を取り除くためのエッセンスが、全て含まれているところにあります。ブレス・ワーク、スロー・エクササイズ、そしてトレーニング中の正しい状態を通して、私たちは自分の緊張を感じ、プライドやエゴ、恐怖、焦り、攻撃性を見極めることができるのです。まずは見極めることが、自分自身のトレーニングや人生から望ましくない感情を取り除く技術へとつながっていきます。

自己発見とセルフ・コントロールはたいへんな作業ですが、本当に実り多いものです。それを正しくやりさえすれば、意識と無意識の両面にとてつもない喜びが得られます。私の知っている範囲において、システマをやっている全ての人は確かにより幸せで、よ健康になっているのです。

Q:トレーニング・グループでは時々、ビギナーや格闘経験が豊富な人、時にプロの人が混じっていたり、とても若い人と年配の方が一緒だったりします。参加者の年齢や経験がとても多様なトレーニング・グループに対しての提案はありますか?

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Vladimir Vasiliev Born in Russia, Vladimir Vasiliev received intense combative training and profound Systema training from Mikhail Ryabko. Vladimir moved to Canada, and in 1993 founded the first school of Russian Martial Art outside Russia - Systema Headquarters.

He has since personally trained and certified well over 700 qualified Russian Martial Art Systema instructors and schools in over 40 countries worldwide, and has produced an Award-Winning instructional film collection. Vladimir holds a number of government medals and awards including the Russian "Order of Duty and Honor" and the "Order of Loyalty". He offers regular training at his school in Toronto, at international seminars and camps, and through the Systema Video Program.